名探偵パイル・「ノーシン」語源の謎

パイル二等兵

2011年02月28日 14:52

今回どうでもいいを、
私・名探偵パイルが全力で推理します!


結構長いですが、是非お読み下さい  ※非ミリタリー・非アウトドアです


私は頭痛持ちです・・・なので必ず財布の中に頭痛薬を入れています。
そんな頭痛薬の語源について調べて見ました


バファリン(LION)…「Buffer」(緩和物)+「Aspirin」(アスピリン)の造語
セデス(シオノギ製薬)…「Sedative」(鎮静させる)から
ノーシン(アラクス)…「脳が新しくなったようになる」(脳新)から
イブ(エスエス製薬)…「Ibuprofen」(イブプロフェン)から
ナロン(大正製薬)…「良くなろう」から
ケロリン(内外製薬)…「ケロリと治る」から
ハッキリ(小林製薬)…「頭がハッキリする」から (元は目薬の商品名だったらしい)


この中で製薬会社が公表している語源は「バファリン」のみで、
その他は情報源が定かではない非公式なものです。

しかし非公式とは言え、どれも何となくですが納得行くネーミングですね
ただ一つ・・・「ノーシン」を除いては!!
(本当は「ナロン」もちょっと疑問)


ノーシンの語源には諸説あるようなので、まずはそれらをご紹介致します。
(製造元のアラクスも語源がどれなのか分からないそうです)

Wikipedia】  詳しくはコチラ→『ノーシン - Wikipedia
  ・「脳がしーんとする」から
  ・「脳が新しくなったようにすっきりする」(脳新)から
  ・中国神話の神農をもじった

株式会社アラクス】  詳しくはコチラ→『ノーシンの事実』(アラクスHP)
  ・「脳が新しくなったようにスカッと頭痛が治る薬」という意味の「脳新」説
  ・脳神経薬である「脳神経の薬」を略した「脳神」説
  ・中国の医薬の神様「神農」をひっくりがえした「農神」説

唐沢俊一】  『薬局通』(唐沢俊一著)より
  ・脳を鎮める「脳鎮」説  →ガセネタであるとして、酷評されています


総合すると以下の4つの説が存在する事になります。(「脳鎮」説除外)

①「脳がシーン」説
②「脳新」説
③「神農」説
④「脳神経薬」説


これらの説を検証する前に「ノーシン」と、
製造元「アラクス(荒川長太郎合名会社)」の簡単な歴史について・・・
※単にWikiの内容を要約しているだけです

1853年(嘉永06年):「鎰長」(いっちょう)創業
1917年(大正06年):「荒川長太郎合名会社」に社名変更
1918年(大正07年):「ノーシン」が製造販売され始める  ※不確定情報
1990年(平成02年):同合名会社から独立して新会社「アラクス」設立
2010年(平成22年):パイル二等兵が「ノーシン」の語源に疑問を持つ
2011年(平成23年):パイル二等兵が「ノーシン」の語源の推理に乗り出す


では早速、各説について個別に検証して行きたいと思います。


①「脳がシーン」説

かなり怪しい説ですね
90年以上前に「脳がシーンとする」なんて表現をしたとは考え辛い・・・

『社名・商品名検定 キミの名は』(朝日新聞社)によると、
アラクスはこの説を否定したそうです。実際、同社のHPにこの説は書かれてませんね。

かなり浸透している説ですが、
何の情報源も無いですし、証明しようも無いので一応「ガセネタ」と結論付けときましょう。



②「脳新」説

現在、主流かつ有力な語源です。アラクスも最有力だと言っています。
Wikiでは情報源として、「脳新」と書かれた1920年代の中国のポスターを挙げています。
・・・が、どうなんでしょうか? 

中国で外国語(日本でカタカナ表記される言葉)を漢字表記する際、
言葉の音(おん)が最優先で、漢字の意味は後回し(もしくは無視)されている気がします。

「ノーシン」も中国語圏で販売する際、
音を漢字に当てはめて「脳新」(「ナオシン」と発音するらしい)と命名。
後にそれを見た日本人が「脳が新しくなる」と勝手に解釈した。
・・・と私は考えております。

一応結論を出しますと、
中国語表記が「脳新」だからと言って、それが語源であるとは考え辛い・・・です。

日本で発売された「脳新」表記のノーシンがあれば、この説を証明する証拠となるでしょうが・・・


③「神農」説

何故、中国の神様なのでしょうか?

もし商品名に神様の名前をつけようとするなら、まず日本の神様から選ぶのでは?
例えば「薬師如来」(神様ではないですが)から「シーヤク」とか・・・

そもそも何故、ひっくり返すのでしょうか? 単純に「シンノー」で良いのでは?

私個人の感覚からすると、
神様の名前を半分に切って逆さまにするのは、罰当たりの様な気がします。

一応結論を出しますと、
何か微妙・・・何か罰当たり・・・何か後付っぽい・・・です。

「農神」表記のノーシンがあれば、この説を証明する証拠となるでしょうが・・・


④「脳神経薬」説

単純にコレが正解なのではないでしょうか? 何のヒネリも無くて、面白みに欠けますけどね

私はこんな仮説を立ててみました・・・


鎰長」では頭痛薬のみではなく、各種薬剤を取り扱っていた。
当時は独自の商品名を付けておらず、
頭痛薬なら「脳神経薬」、胃薬なら「胃腸薬」、目薬なら「眼科薬」、塗り薬なら「皮膚薬
と言う単純明快なモノだった。

この中で「脳神経薬」はかなりの人気を博し、「鎰長」の看板商品となった。
そしていつしか、人気者や人気商品が略されて呼ばれるように
脳神経薬」も「脳神」と略されて呼ばれるようになっていた。

荒川長太郎合名会社」に社名変更後も「脳神経薬」は看板商品だった。
荒木長太郎は、「のーしん」という呼ばれ方が定着した「脳神経薬」を
いっそのこと「ノーシン」と言う商品名にしようと決意した。
(略語や愛称が、正式な商品名や社名に採用されることはよくある)

こうして「ノーシン」は誕生した。

ただし「胃腸薬」などは、略して呼ばれる程の商品ではなかった為、
その後も同じ「胃腸薬」と言う名で販売され続けていた。

当時日本の統治下であった台湾で「ノーシン」を売り出すにあたり、漢字表記が考えられた。
そのまま「脳神」と表記すると「ナオシェン」と読んでしまう為、
神(シェン)」を「新(シン)」に変え、「脳新」とした。


・・・と言うものですが、どうでしょうか?

「脳神経薬」とだけ書かれた頭痛薬、もしくは「脳神」表記のノーシンがあれば、
私の仮説並びに「脳神」説を証明する証拠となるでしょうが・・・残念ながらありません

・・・・・・がしかし!!裏付ける証拠ならあります!!

まずはコチラをご覧下さい


小売用のノーシンが30箱入った大箱です。  ※未開封品の為、中は未確認
文字が右から左に書かれていることから、容易に戦前の物と判断できます。
(戦前の物でも左から右に書かれている物もあります)



良く見ると、「満州国」の文字がありますので1932~1945年の物と断定出来ます。

そしてこのノーシンには脳神経薬」説を裏付ける表記が・・・



ご覧下さい!!
画像最上段に脳神経専門剤とあるじゃないですか!!
これはノーシンが脳神経の薬と言う認識で製造されていた確固たる証拠!!

更に言いますと、「鎰長」時代の頭痛薬が「脳神経専門剤」と言う名称だった名残!!

ただ皆さん、こうお思いでしょう?
「脳神経専門剤なんて単純な名前付けねーだろ」・・・と

その思いに答える証拠がコチラ



戦前の荒川長太郎合名会社製・胃腸薬、その名もズバリ胃腸専門薬!!
(コレが売れていたら「イチョー」なんて商品名になってたかも)

この胃腸薬が「鎰長」時代からあったかは不明ですが、
少なくともこの会社には商品名に「~専門剤(薬)」と付ける傾向があると言う証明になります


「脳神経専門剤」と冠された「ノーシン」、
「胃腸専門薬」と言う名の胃腸薬・・・

この二つの存在が、私の仮説を裏付けているのではないでしょうか!?

今後「脳神経専門剤」とだけ表記された頭痛薬が発見されれば、私の仮説が証明されます。
薬マニアの方々、並びに古い救急箱を押入れに仕舞いっ放しの方々、
是非一度、「脳神経専門剤」が紛れ込んでいないかお確かめ下さい。

もし発見されたならば、私に御一報を!!


・・・これで「脳神経薬」説が主流になればいいなァ


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